2025/11/10

30歳以上の成人の約８０％がかかっていると言われる歯周病。
歯周病とは歯と歯ぐき（歯肉）の隙間（歯周ポケット）から侵入した細菌が歯肉に炎症を引き起こした状態（歯肉炎）に加えて歯を支える骨（歯槽骨）を溶かしてグラグラにさせてしまう状態（歯周炎）を合わせた病気です。
歯科の2大疾患と言われる歯周病とむし歯（う蝕）。むし歯は細菌の作り出す酸によって歯が溶かされて歯に穴があく病気で歯周病とむし歯とは大きく異なる病気です。成人期において歯を失う原因の多くは歯周病もしくはむし歯によるものだそうです。

歯周病の原因
お口の中にはおよそ400〜700種類の細菌が住んでいます。歯周病には歯周病菌と言われる細菌が関わっていると考えられています。これらの細菌は普段あまり悪いことをしませんが、歯磨きが充分でなかったりすると細菌がネバネバした物質を作り出し歯の表面にくっつきます。これを歯垢（プラーク）と言い、粘着性が強くうがいをした程度では落ちません。この歯垢１mgの中には約１億個以上もの細菌が含まれていると言われています。その中でも歯周病を引き起こす細菌が多く存在しているそうです。

症状
初期段階ではなかなか自分自身で気がつくような症状は出てきません。細菌が出す毒素によって歯肉が腫れたり出血しやすくなります（歯肉炎）。歯肉炎が進行すると歯周ポケットが深くなります。歯周ポケットの中は歯周病菌の繁殖しやすい酸素の少ない状態であるため歯周病菌の繁殖がさらに進みポケットの奥深くへと進行していきます。さらに進むと歯周病菌が出す毒素が歯を支える骨を溶かしていき歯がグラグラしてきたり、歯肉が下がってきたり、歯が抜けてしまったりします。

歯周病が起こりやすい・進行させる因子はいろいろありますが、喫煙者は非喫煙者と比較し３倍以上かかりやすいと言われ、悪化しやすいこともわかっています。口の中の粘膜や歯ぐきから吸収されたタバコの有害物質が血管を収縮させ歯ぐきの血流量を減少させます。そのため、歯周病菌が繁殖しやすくなり歯周病を悪化させていきます。喫煙者の歯周病の治療効果は低く治療後の治りが悪いそうです。禁煙をすることにより歯を支える組織の状態が良くなるため歯周病のリスクが下がり治療効果も上がります。

歯周病が全身に及ぼす影響
歯周病菌は歯肉の血管から入り全身に運ばれていき、様々な病気を引き起こしたり悪化させたりすると言われています。
食べ物や飲み物・唾液が誤って気管に入ってしまうことがあります（誤嚥）。この時、口の中の歯周病菌が混じって気管に侵入してしまいます。誤嚥性肺炎の原因となってしまうこともあります。
歯周病菌が血糖値を下げるホルモン（インスリン）の働きを邪魔してしまうと考えられていて、血糖値が下がりにくく糖尿病の治療がうまくできなかったりして悪化させます。
歯周病菌の刺激により血管内に脂肪性沈着物がたまりやすくなり、血液の通り道が細くなる動脈硬化が悪化すると言われています。
歯周病で歯が抜けると噛む力が弱まり、骨を作るのに必要なカルシウムなどの栄養素を十分に摂取することができず骨粗しょう症が悪化してしまう恐れがあるとも言われています。

歯周病の予防と治療
現在では歯周病は予防でき治療も可能です。以前は「不治の病」とさえ言われていましたが、歯周治療の急速な進歩で進行を阻止することが可能となり健康を取り戻すことができます。
歯周病の原因は歯垢ですから、歯垢をつけない・溜めない・増やさないことが基本です。そのためには正しい歯磨きの方法で毎日実行することで、歯の表面に歯垢のない清潔な状態にしておくことが何より大切です。
歯みがきを助けるものとして電動歯ブラシ・歯磨剤・洗口液などを併用することで歯垢の付着を防止する効果が期待できます。歯間部清掃にはデンタルフロス・歯間ブラシといった補助道具が便利です。

歯周病になった場合、考えられる場合は歯科受診し診断を受け治療しましょう。
治療終了後は管理しないと歯周病が再発することがあるので、定期的に歯科受診しチェックや口腔洗浄を受ける管理が大切です。
いつまでも健康でおいしく食べることができる状態でありたいものです。